300歳ブログ
300歳のためのブログだよ!
30のお題・)23魂を喰われた人
2012.08.15 (Wed) | Category : 30のお題
良いなぁ夏コミ・・・ギリィッ・・・!
悔しいからエアコミケでエア新刊出してやんよ!
って気分で書いてましたが、安定の遅筆さ具合でした。
そんな今回は、いつもの捏造の更に上を行く捏造というか、完全に妄想でしかありません。
オリキャラで話が進み、テッドも出てこないです。
どうしようかなと思いましたが、書きたいもの書こうと思って。
テッド関連に違いはありませんが、そういうものですので、お読みくださる方はご注意ください。
怖いもの見たさのこの時期ぴったり冷涼ゾーンは顔文字君からどうぞー。
だからと言ってホラーじゃないよ!
でも雰囲気でお願いしたい!(苦笑)
わたしは、絶望の光を生むのだそうだ。
「暗くなるから早くお家に入りなさーい」
「はぁーい」
この村はお世辞にも大きいとは言えない村で、人口だって多くない。緑に囲まれた山の中の、外を歩けば皆が皆を知っている、そんな規模の穏やかな村だ。
住人は畑を耕し森や川で狩りを行い、家畜を育てて生計を立てている。自然と共存するようにひっそりと存在する村は、他所の人間が来ることなども滅多にない。同様に、出ていくものも。
世界はここしかないのだと、そんな感覚にすらなるほど、外界というものはこの村では希薄だった。
「明日は村長のお勉強の日でしょう。予習はしたの?」
けれど、知識としてはこうして大人たちが交代で、それぞれの得意分野を教えてくれる時間があるから、排他的な閉じた村というわけではなく。
「うん、ばっちり!」
後々思えば、一歩引いた視点から語られる外の話は、むしろよく見ていてこその内容と知れた。
こうして毎日が過ぎていき、わたしの年が両手の指だけでは足りなくなった頃。
変化は突然訪れる。
「・・・だぁれ?」
季節が初夏に差し掛かり、木々や草花が一番美しく萠え盛る中、その子は枯葉色の外套を身に着けて現れた。
この村を抱く森や山一体には特殊な結界が張ってあって、簡単に出入りが出来なくなっている。にもかかわらず、ごくごく当たり前のように立っていたその少年は、臆することなく声をかけてきたわたしに、逆に驚いたのだと後に聞いた。
やれ侵入者かと騒然としたものの、蓋を開けてみれば、十何年も前に村を出た青年が連れて帰って来た子で、長に話を通している間に、出てきてしまったらしい。
「ぼくは、」
「コラ! 勝手に出歩くなって言ったろ!」
口を開いた直後、見知らぬ大人がわたしたち、というより少年に向かって叫び、続いて村の大人たちも到着した。すぐに引っ張られるように連れて行かれたから、会話と呼べるようなものはない。
それが最初。
翌日には連絡が行き届いて、昨日の少年と見知らぬ大人が父子であり、今後はこの村で生活をするのだと伝えられた。
「こっちだよ、行こ!」
既に出会っていたことと、細かいことはあまり気にしない元々の性格とで、わたしは簡単に少年の手を引いたけれど。
「でも、よそ者のぼくといっしょにいると・・・!」
慌てたように少年がたたらを踏む。僅かに視線を遠くへ飛ばした先に、村の他の子供たち。
自分に対する負の感覚というものは、子供だろうが何だろうが感じ取れてしまうものだ。
この村の新しい顔は、赤ん坊が生まれること以外ほとんどない。大人たちでさえ数えられる程度であろう今回の出来事は、わたしと同年代の子供であれば、間違いなく初めてのケース。
子供というのは無邪気ゆえに残酷で、戸惑いと混乱と、蔑視すら覚える眼差しが少年に降り注いでいた。
「よそ者って、わたしと何がちがうの?」
これは随分経ってからも言われることなのだけれど、あの居心地の悪さを意に介さず、ことんと首を傾げてそう発したわたしへの衝撃はなかったそうだ。
いまだによく解らない評価をもらったそのまま。
「目のかずも鼻のかずも同じだし、耳だって同じところについてるわ。色がちがうのは、外から来たせいじゃないでしょ? わたしだってみんなと同じ色じゃないもの」
少しくせのあるオレンジの髪を一房摘まんでそう言った。
ぽかんと口を開き、瞳を大きくさせて見つめ返した少年にニコリと笑う。
「それにね、ちがうのはわたしの方なの」
村の住人は全員、数えで十を超えた歳の一番陽の短い日に声を聞く。声、というのはつまり、占いや予言の類だ。
あの日、わたしだけに告げられた内容は、今でも一言一句、間違えることなく覚えている。そのとき同席した父母の顔も。
「わたし、みんなを悲しくさせてしまうのよ」
難しい言葉で意味が解らず首を傾げれば、眉間に皺を寄せて険しい顔をした父が俯き、母は口元を抑えて肩を震わせて。
幼いながらも、その雰囲気が尋常ではないというのは感じ取れて、漠然とただ、そうかと何かを受容れた。
遠巻きに眺める他の子供たちを後目に、村の奥、昨日の場所までずんずん歩いて、流れる小川に足を浸せば、山を通ってくる水は冷たく気分が晴れる。
裾をたくし上げるときに手を離した少年は、そのまま小川の縁でわたしを見ていた。
変化を怖がる人は多い。
わたしに告げられた声が、村に広まった時もそうだった。
だから、やっぱりこの子もそうかなと思って。
でも。
「・・・ぼくは悲しくなってないよ」
ヘーゼルの瞳を少しも逸らすことなく、はっきりそう言った少年が、足場の悪さを感じさせずに小川に降りる。
ばしゃばしゃと弾く水音をどこか遠くで感じながら、正面に辿り着いて手を伸ばされる光景を眺めていた。
「うれしかったよ、話してくれて」
ゆっくりと触れてきた指は温かくて、確かに涼しさを求めて小川に来たのに、その心地よさは、足元の冷たさなんか到底及ばなかった。
本当に触れる程度、遠慮がちのそれを握り直して。
ふふ、と互いに笑い合う。
そうして時が流れ、わたしも彼も、大人になった。
夢を見る。
上も下も何もない、真っ暗な空間にわたしだけがいる夢だ。
「怖いとか、気持ち悪いとか」
「ないの」
今日もいつも通り見たわ、と彼に伝えれば、さすがに不思議そうな顔をされて僅かに眉を寄せる。妙にはっきりと残っていて、これでもう五日も続いているから、その表情も頷けたし、わたし自身もおかしいとは思うのだけれど。
「嫌悪感や畏怖のようなものはないの。ただちょっと冷たくて暗くて・・・寂しいわ」
それは敵意も感じなければ、害もない。目が覚めてから、よく解らない感情を引き摺って、胸が小さく痛むことはあっても。
この村の環境も住人も少し特殊だから、能力差はあれど、夢が何かを伝えてくるという話は珍しくない。
「さて、わしには解らんよ。第一、お主に与えられておる声は十三年前のあれだけじゃ」
当時からその地位についている婆に尋ねたところで、声は届けられた本人にしか解らないと言う。そして、わたしには十の時以外に声はないと。
「・・・でも、じゃあ・・・」
「わしに言えることは何もありゃせん」
今朝を思い出して考えを巡らせれば、婆はぷかりと薬草を練った吸い付きを燻らせる。ところで、と続いた台詞に視線を上げて顔を窺った瞬間、ぴたりと合った双眸が柔らかく撓んだ。
「腹にやや子がおるぞ」
相も変わらず、ひたすらに暗い空間が広がる光景。現実味のなさと繰り返し見ていることで、早々に夢なのだと気付いて、けれど、常のそれとは違うと思い至る。
冷たさや寂しさが薄くなっている?
肌が捉えた感覚は曖昧ながらも、しっかりと違和感を主張していた。
例によって嫌悪も畏怖もない。あるのは、どこか重さを和らげた漆黒。そして、熱と鼓動。内側から響くように、拡がるように。
まるで、胎動のように。
ああそうか。あの声は。声が示したものは。
浮上する気配に身を任せ、努めて意識ごと覚醒を促した。一度瞳を閉じてゆっくりと瞼を持ち上げれば、見慣れた天井が視界に映り、戻ってきたのだと理解する。
何の変化も見られない腹部に手を当て、息を大きく吸い込んだ。
幼い頃から繰り返し聞かされる創世の物語は、わたしたちにとってただの御伽噺などではない。
世界の『最初』はここにある。
そのためのわたしたちなのだから。
でも、この展開は誰が予想していただろう? 声を告げた婆も、悲愴に嘆いた父母も、村の大人たちの誰一人として、きっと。
わたしが、世界を滅ぼせる力の唯一の光を生むなど。
今この瞬間ですら、知るのはわたし一人だ。
長く深い息を細くゆっくり吐き出して止める。
夢は、夢ではなかった。
「・・・確かに、漆黒は闇を示唆するものだしね」
起きてきた彼におはようと言って、向かい合わせで朝食をとる。あのね、と話を切り出して、わたしは昨日見たそれと、ようやく理解した声の意味を言葉にした。
絶望とは闇。
光とは闇にとっての灯火。
つまりわたしは、闇が求める命の灯を産むのだ。
「それは・・・本当なのか」
昨日は曾孫が出来ると頬を綻ばせた祖父が、一転して顔色をなくし、強張らせた表情で言う。この村にいる以上、そして声がそう告げた限り、長への報告は必要不可欠だった。
話のあと、普通に朝食を再開して片付けをし、少ししてから彼は、もしものときは、とだけ発してわたしの手を握って目を合わせる。
あんまりにも神妙すぎて、逆におかしくて、それ以上に嬉しくて笑ってしまったけれど、わたしも彼の瞳を見つめ返し、うん、と応えて。
そのまま向かった長の家で、指示を待った。
「・・・祠に変化はない。思い過ごしではないのか」
それはわたしも足を運んで確認している。外観も気配も変わりはない。ただ、空気はほんの少し、違った気はした。
「解りません。でもわたしには、そう伝わりました」
長は村を治める役目と同時に、祠守を担う。慎重にもなるだろう。何せ、どうなるのか解らない。動きを知る術すらない。真実か否かさえ。
間違えるわけにはいかないのだ。
闇は、絶望を。
それだけの力がある。
「現状で判断は出来ん。私だけで決定を下していいとも思えん。この件、少し預からせてくれ」
小さな沈黙を落としてから綴られた台詞は曖昧で、危惧したもしもが現実になるかもしれない、そう思って隣に座る彼を視界に入れた。
彼はまるで対峙するように祖父から視線を外してはいなくて、倣うようにわたしも顔を正面に向ける。
難しい顔をしているとばかり思っていた祖父は、目元を緩ませてこちらを見ていた。
「よろしくお願いします」
「ああ」
深々と頭を下げた彼に、わたしも祖父の意図を理解する。
恐らくこの報告は、村人はおろか村役の誰にも上げない。それは今後、例えば何かがあった時、一身に非難を受けることになるのだろうけど。
見て見ぬふりをして、村での立場よりも、曾祖父として、今、この子を望んでくれた。
わたしも慌てて頭を下げて、言いたくてたまらない感謝の言葉を、唇を噤んで噛み殺した。
それからは早いような遅いような時の進みで、随分とわたしのお腹は大きくなっていた。
「どのくらいになるの?」
「男の子かしらね、女の子かしらね?」
いろんな人から沢山の言葉をもらって、もうお決まりのような台詞も笑いながら返事をする。採りたての野菜をカゴに、散歩を兼ねて行った畑からの帰り道。
突然の出来事。
「――― え?」
彼が、崖から落ちて亡くなったと聞かされた。
その時のことはよく覚えていない。
次に続くのは心配して様子を見に来た父母の顔で、周りの景色は自宅、無意識のまま戻ってきたわたしはダイニングチェアに座って呆っとしていたようだった。
誰に何が起こっても世界の時間は止まることはない。
陽が傾いて、夜が落ちても戻って来ない彼に、わたしは独りのベッドで泣いた。
そしてさほど日が経たないうちに、まるで代わりのように訪れた陣痛。じくじくと鈍い痛みを訴え、やがて腹部だけに留まらなくなり全身を苛む。いつか感じた気配に、わたしの意識は引きずられて沈んだ。
「・・・あなた」
呟いた言葉は漆黒に融ける。
揶揄ではない。わたしはまた、あの真っ暗な空間に誘われたのだ。
最後に闇が近付いたのは婆がわたしに腹の子を告げた日。以来ぱったりと、嘘のように現れなかったのに。
漆黒の深さも暗さも変わりないけれど、熱と鼓動は前よりも強くなっている気がする。
それがどういうことか。
「あなたが・・・!」
多分わたしは、本能でしっている。
絞り出すように叫べば、闇は、笑ったように空間を歪ませた。
「気が付いた!」
「良かった、しっかり!」
「大きく息を! 小刻みに吸って長く吐いて!」
「赤ちゃんも頑張ってるから!」
朧気な意識と霞む視界に飛び込んできた声。形容しがたい痛みが襲い、空気でも漏れているのか、ぜいぜいと酷く苦しそうな音が耳に響く。
それがわたし自身の呼吸だと理解するのに、そう時間はかからなかった。
「ちゃんと息をして!」
「体温が下がってる、誰かお湯を!」
ドンドンとまるで太鼓のように心臓が鳴る。
視界は涙も邪魔をしてますます霞んだ。
「頭が見えてきた、もう少しよ!」
「頑張って、せーの!」
呼吸なんて出来ているのか解らない。
手足の先は、もう感覚すらなくて動きもしない。
全てが白く濁って行く中で。
「オギャア! オギャア!」
「おめでとう、男の子よ! 元気な男の子!」
我が子の産声と村の女の人の声、それから、頭の奥で煩いほどの人ならざるモノの声が。
恐らく、わたしにしか聞こえていない狂気じみたそれは、言葉ではなくただの音であり、同調するかのように、祠を中心に異質な気配が渦を巻いたことに気付く。
ああ、やはり。
声の真言は、宿主の誕生を示していたのだ。
もしものときは、と彼は言った。
ああ、と祖父は微笑ってくれた。
いつか、本当に絶望を呼んでしまうとしても。
そして彼と、わたしの命が闇に奪われても。
「愛してるわ、テッド」
わたしの記憶は、そこまでだ。
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