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例の名言すぎる名言
2010.09.09 (Thu) | Category : 幕間
テッド生存パラレルネタ。
なんかもう私、パラレル書きですと名乗っても良い気がしてきたくらい、公式設定がない。
なんてこった・・・!
死んでこそだって解ってるんだけどな!
でも他の皆とわいわいさせたいジレンマ。
よし、じゃあパラレル!
抜 け 出 せ る 気 が し な い。
珍しい、と思った。
普段決して立てない荒々しい足音と、白熱した作戦会議中でもあまり聞くことのない、ぽんぽんと速いテンポの言葉の応酬。
年齢を考えればそれも歳相応なのだろうが、立場なのか生い立ちなのか、大人の中心にいるときの当然な態度は、なかなか崩れるものではないのに。
しかも。
「だから、つべこべ言ってねーで試してみろっつの!」
「つべこべ言ってないよ、それに大丈夫だって言ってるじゃないか!」
「自分のことも解んねぇのか、この坊ちゃんが!」
「解ってるから大丈夫だって言ってるんだよ! あと坊ちゃんって呼ぶな!」
間違いなく喧嘩だ。この上なく珍しい。
何だ何だ面白そうだなもっとやれ、なんて不謹慎にも考えていたら、当の本人2人が階段から下りてきた。共にしかめっ面で眉間にしわを寄せている。
言い合いはなおも続いていて、どこに行くのか都合のいいことに、こちらに向かって歩いて来ていたから、ビクトールは片手をあげてよう、と軽く声をかけた。
「なんだ、お2人さん。どうかしたのか?」
「ビクトール」
「あ、ビクトールさん」
かけられた声に反応し、ころりと表情も口調も変えて顔を向ける。
状況が状況だから子供らしいことをしろとは言えないが、それでも軍主であるティルに、上手く気を抜かせたり笑わせたりするのはテッドで、時々シーナやパーンに仕掛ける悪戯を、事前打合せもなくやってのけ楽しそうにしているから、こんな風に険悪になどならないと思っていた。
それは他の仲間も同じようで、呆気に取られたように遠巻きに見ているものもいる。
「お偉いさん同士の揉め事は軍の亀裂にもなりかねねぇからなー、穏便に頼むぜ」
ヘラヘラと茶化した感じで言う割に重い内容の仲裁をすれば、ティルはハッと気付いて苦い顔を見せ、隣のテッドはビクトールに負けず劣らずヘラリと笑みを零して明るく声を上げた。
「やっだなー、お偉いさんじゃないですよ。俺はただの子供ですもん。亀裂になるほどの楔じゃないですって」
あっはと何の含みもない笑顔で言うその言葉は、周囲の人間にもそれを印象付ける。
大したことではない、心配するものはないと。
(本当、上手いもんだ)
それは軍主へのフォローも兼ねて。
「なるほど、そうか。じゃあ何だってんだ?」
テッドの一言で場の空気が元に戻り、城内は常のざわめきに満ちてきた。そもそもこの程度で揺らぐような、やわな人選はしていないのだ。もう各自が各自の持ち場へ移動している。
「いや、すまなかった。本当に大したことじゃなかったんだ」
僅かにしょぼくれたような様子だが、すでにビクトールが言った立場の顔でティルが苦笑した。
テッドは自身の評価をああ言ったが、実際はそうじゃない。明確な役職を持っていないから枠内とは言い難いだけで、医療班取り纏めとしての立場は、充分な発言力を持つ。
もっとも、医者ではなくあくまでも取り纏めだからと、権力を拒否していてこその台詞なのだけれども。
「そうなんですよ。コイツがもっと大人になればいいんです」
「それとは違うよ」
「同じだろ。自己管理できないのも含めて」
「自己管理は出来てるって言ってるじゃないか」
「出来てたら俺が口出ししてねぇっつーの」
「しなくていいよ、出来てるから」
さっきのやり取りがあったおかげで、これはただの子供同士の喧嘩と認識されたらしく、多少声が大きくなっても、もう誰も気にしないのは幸いだ。
軍主の少年にしろ取り纏めの少年にしろ、キツイ顔をしているか飄々としているかを見慣れているビクトールにとって、こういったことは実に良い傾向だとは思う。
でもこれは、確実に無限ループのフラグが立っていやしないか。
もういっそこのまま気分転換と称して、殴り合いの喧嘩でもさせたほうが落ち着くんじゃねーかな、と保護者ヅラしてかけた声の役割を放棄しようかと思ったとき。
「おーい、何してんのお前ら」
「通行の邪魔」
ドラ息子と毒舌少年の登場である。
前線時以外では医療班の手伝いをしているシーナと、紋章の腕を見込まれて医療班・・・というよりテッド個人に引きずり込まれて手伝わされているルックは、歳が近いせいかティルともテッドとも割りとよく話をしていた。
「邪魔ってあのな」
「そっちこそ何してるんだ」
「お前ら声でけーよ。あっちまで丸聞こえ」
「暇なら仲間集めでも行ってきなよ」
あ、これ、収拾つかなくなるパターンですね。
おかしなことなどないように会話が続いているから、これはこれで成り立つのだろうが、結果、当初の予定じゃない方に流れてしまって、また振り出しに戻る気がする。無限ループから抜け出せていない。
「よぉし!」
一抹の不安を感じたビクトールが、パァン! と大きな音を立てて手を叩く。
「原因は何だ? ん?」
無理矢理の軌道修正だ。
それぞれ好きなように喋っていたように感じた4人の言葉は、ああそうだとでも言うようにティルとテッドの2人に視線が集まって、ピタリと止まった。
「原因・・・原因ねぇー・・・」
曰く。
連日の遠征と怒涛の書類作業、持ち込まれる要望への対応など、ここの所軍主の激務が続いていたらしい。
見かねた軍師他幹部の面々が体調を考慮し、医療班上役へと相談すると、同じく気になっていたとのことで薬草を調合することになる。
それが。
「・・・・・凄いんだ」
「は?」
「・・・もう見るからになんだ」
斜め下に視線を投げながら呟くように言うティルの言葉に、何となく事情を察したあとから合流の2人は、あーとでも言いたそうな表情でテッドを見た。
当然、今の話の軍主はティルで、医療班上役はテッドだ。
「匂いは一応普通なんだ。ただ色と、醸し出す雰囲気が」
急須から注がれたそれは、滋養強壮と体力回復。効果は俺のお墨付き、と差し出されたらしいのだけれども。
断固拒否して執務室から脱出してくるほど、お気に召さなかったということだ。
「・・・本当大したことじゃねぇな」
「だろー!?」
「アレを知らないからそう言えるんだ!」
さっきティル本人が言った言葉を、そっくりそのまま使って感想を述べると、当事者二人は真逆の反応をしてくれた。
「俺、飲んだよ」
それに別に何でもないような口調で続けたのはシーナで、驚いたように顔を上げたティルに、
「まぁ確かに見た目とか味とかはアレだけど。効果は本当マジ」
と、神妙に頷いてさえみせる。その上、
「見た目とあの味さえ何とかなればね・・・効果だけは僕も認めるよ」
人を褒めることなんてまずしないルックにまでそう言われる効果なら間違いなさそうだ。
でも。
「ほら見ろ。目ぇつぶって一気に飲めばいいんだからさ」
必ず付け加えられる一言と、製作者本人も認める外観の酷さ。どんだけだ。
「・・・っつってもそれだけだろ? 飲みゃ良いじゃねーか」
それさえ我慢すれば、飲んだ人間がこうしてぴんぴんしているわけだし、気に病むほどのものではないだろうに。何よりも他人の厚意、特にこの唯一の親友からのものを、断ることなんかしなかっただろう、とビクトールが視線で語る。
「飲めないことはないぜ?」
「いやだ」
同じくシーナも、なっているのかなっていないのか微妙なフォローを口にしたが、ティルはフイと誰からも視線を外して、すげなく断った。
「にがいのは、いやだ」
ダメ押しのように、けれど明確な理由を添えて、もう一度。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「え」
「・・・なに、そういうこと?」
周りを巻き込みかねない喧嘩までして、一体どんなことを気にしているのかと思えば。
「コイツ、子供舌なんですよ」
苦いのは飲みたくないと。
それだけか。
「ほら、峠で盗人茶出されたじゃないですか。あのときもそうですよ。あれ、別に警戒してじゃないです。素です」
溜息と共に暴露の如くテッドが言ったその出来事は、ビクトールもその場にいて覚えている。やけにゴネるなとは思ったのだが、そのときはそれだけで、後々何かを察知したから回避しようとしていたのか、と感心したのだが。
「そ、うか・・・」
ただ単に、本気で飲みたくなかっただけらしい。
「にがいのは美味しくないじゃないか」
「良薬は口に苦しって言うだろ。美味い、美味くないじゃないんだよ。駄々捏ねんな、坊ちゃん」
「そのくらい知ってる。でも嫌なものは嫌なんだ。あと、坊ちゃんって呼ぶなってば」
「ガキだから坊ちゃんって呼んでんだ。呼ばれたくないならそれなりの態度を取れ」
「・・・僕は軍主だぞ」
「だったら命令しろよ。必要ない、持って下がれって」
「テッドじゃなかったらそうしてた」
再び口論になった2人を、残りの3人は少し遠巻きに見る。どことなく疲れて見えるのは、多分きっと、見間違いじゃない。
「あー、何だ、結局なにが悪いんだこれ」
「・・・馬鹿軍主だろ」
「まぁでもアレを出されたときの気持ちは解るなー」
本当酷いもん、とシーナが言えば、ルックも無言で頷いた。見たことがないビクトールに、その凄まじさは解らないが、よほどなのだろう。それでも、ここまで拒否しなくても、とは思うけれど。
「とりあえず何だ」
「何はともあれ」
「くっだらないよね」
確かに二人の言うとおり、大したことじゃなかった。むしろ最後のルックの言葉に同意したい。
はぁ、と誰が吐いたか解らない溜息は、絶賛言い合い中の二人に届くことはなかった。
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