300歳ブログ
300歳のためのブログだよ!
トキカケ+
2010.12.13 (Mon) | Category : 小話
本当は先月、11月22日の良い夫婦の日とか、11月23日の良い兄さんの日とか。
色々考えてはいたものの、形にはなりませんでした。
夫婦ネタは難しかったってのと(苦笑)、第一回チキチキ☆アニキ大会っていう酷いフレーズしか思い浮かばなかったのが原因なんですが。
私一体何を考えてチキチキ・・・どこ目指してたの・・・!(本 当 に な)
で、タイトルが前日記のカタカナ版+です。
解りやすすぎるのでアレですが、長くなったから省いたとこに、ちょこっとプラス。
パッチンパチパチありがとうございます!
更新の糧!! 本当に!!
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パラレルにもほどがあるシリーズ お前の愛で見えない ゆっくりしていってね!
二つの蝋台に煌々と炎を燈した部屋の中、身なりのいい服を着込んだ二人の男が、置かれた膳を真ん中に、向かい合わせに座っている。
「こちらは義を蔑にせざるをえなかった。それを繕うために、花代にイロをつけてお返ししてる。それでこれは割に合いません」
目の前の膳に積まれた額を一瞥しただけで、手にも取らず言い切った年若い男のその台詞に、部屋の主であり見世の主であるシュウは、表情を変えないまま眉を寄せた。
「無理に横入りさせてきたのはそちらです」
「差し紙は回したはずだが」
「ええ、頂いています。けれど正式な手続きを通す前に、直接本人に口利きをしているのは如何でしょう?」
見世の主人に頼まれて断るなんて、廓に生きる人間には出来ませんよ。
それが例え馴染みの浅い見世だとしても、限られた世界の中でのことだ。どこでどう巡り巡って自分に戻るか知れず、かつ、この世界での情や仕来りは重く、深い。
最高級の地位を預けられている松の位でも、楼主に背くなどまずしないだろう。例外はいるけれども。
「そちらがこれでと仰るのでしたら承知しましょう。ですが、うちのものを軽く扱われるのであれば、今後はこちらも考えさせていただきます」
楼主代理で参りましたと言って敷居をまたいだのだ。年若い男の言葉は、そのまま相手の見世全体の意思となる。
通常であれば別の見世からの呼子料は、同じ廓内のよしみや、大座敷での花代ということで堪忍料が引かれ、地位によってある程度定められている固定額に、座主からの上乗せ分を頂戴する。
この上乗せ分は座主によりけりだが、額はいわゆる気に入り代のように扱われるため、高ければ高いほど、その相手に対する好意の高さと取られる。
つまり、座主が相手にどれだけの価値をつけるかということだ。
とは言え直接そのやり取りをするのは本人ではなく、遣手や番頭や女将、見世の勘定を取り仕切るものである。明確な決まりはなく、オープンにする必要もないそれは、勘定側の思惑次第で、実際に支払われた上乗せ分の中から支払われる。
額の釣り上げを謀るのは当然。
今回の場合のように、元々それなりに忙しい身の太夫衆を指名の上、座敷がかぶっていたことを考えれば、確実に呼子料は跳ね上がる。
どうしてもと言うならば、上乗せを高額にする必要があるからだ。
だが提示された額は常のそれと同じ。
確かに指定の刻限を融通した経緯はあるが、それはさほど左右されるものではない。
「・・・申されるとおりだな。こちらの非礼をお詫びしよう」
腕を組み、考え込むような姿勢だったシュウが、続けて障子の向こうへ「おい」と声をかける。控えていた青年がすぐに現れ、頭を下げた。
「四つ積め」
顔を正面にしたままシュウがそう言うと、恐らく、積まれた額の予想もついていたのだろう、上乗せされた額とほぼ同等となったそれに、向かい合わせの顔がニッコリと笑みを作る。
「ご理解いただけて嬉しいです。こちらとしても、事を荒げたくはありませんから」
シュウの指示と違わず追加で積まれた四つの束を含む膳を引き寄せ、丁寧に深朱の風呂敷に包んだ。
「お送りしよう」
「お気遣いありがとうございます。しかし、外に待たせておりますのでお構いなく」
自身の左隣にその存在を主張する深朱を置き、では、と挨拶の口上を述べて部屋を後にする。遠ざかっていく僅かな足音が消えた頃、シュウが大きく息を吐いて。
「さすが、エレノアがついているだけの事はある、か」
まだ若いとは言え侮れんと呟いた。
廓と外界を繋ぐ太鼓橋にある、重々しい門はとうに閉じられた。
泊り客以外は、その前までに廓を出る決まりになっている。全ての見世で客の見送りが終わり、通りの人影もまばらになっていた。
カロン、と下駄の音を響かせて見世から出れば、格子に背を預けて腕を組んでいる少年の姿。
「お疲れ様、テッド」
件の太夫衆だ。
「見世から言付けだってクラウスさんから紙渡されて、何事かと思っただろーが」
「一人でも良いかと思ったんだけどね、まぁ一応」
言って僅かに左手を持ち上げる。ぶら下がるのは四角い何かを包んだ深朱の風呂敷。
「・・・お前」
そこに何が入れられているのかを知っているのは、見世のものでもごく僅かで、その僅かの枠内に入っているテッドは眉を顰めた。他の荷物と変わらない持ち運びをするためか、中身がそうだとは誰もが思わない。
とは言え、端の何人かを集めるには充分だ。
「楼主代理の自覚持てよ、ラズロ」
無頓着すぎんだろ、と溜息交じりで言われるけれど、これでもラズロとしては大分自覚を持ってきたほうである。
「持ってるよ。最近は料理番も風呂番もしなくなったし」
「当たり前だ。」
どこの世界に、楼主自らそんなことする見世があるんだ。
元が見世の若い衆のラズロは、現楼主であるリノから唐突に代理の役を命じられた。それまでも細々とした見世の全体を手伝って動いていたのだが、いきなりの大抜擢に目下楼主代理修行中の身で、前のクセが抜けず、調理場へ入ることもしょっちゅうだ。
ラズロはカコカコと下駄を鳴らし、テッドは雪駄で灯りを落とした廓を歩く。
宴は見世仕舞いまで行われ、泊りの彼らに暇を告げて座を後にした。テッドやジョウイ、シーナなどは太夫衆と呼ばれる男芸者だ。遊女と違って同衾はしない。座が終われば席を立つ。
「そういえば明日、昼見世の時間ジーンさんに呼ばれてるから行ってね」
「・・・なんでだよ。あの女に呼び出しを受ける理由はねぇぞ」
「この間ジーンさんの座敷で弾いたんだって?」
指で示され落とした視界に入ってきたのは、抱えるようにして持つ濃紺の風呂敷。包まれているのは真白の三弦。
「とても珍しい高価なものよねって。音色も良いし、じっくり聞かせてほしいわ、だそうだよ」
再度左手を少し持ち上げたところを見ると、ここに来る前にラズロがすでにその分を、前払いでいただいているのだろう。
ジーンはこの廓の大見世の中でもトップの松の位で、名を知らぬものはいないほどの地位を持つ。
そのため、ジーンの座敷に呼ばれると言うことは、それだけで箔がつくのだ。その座敷に呼ぶ人員も、ジーンのお気に入りを、旦那方を通して声をかけるため、ジーンに好かれることを喜びこそすれ、嫌がるものはいない。
テッドは苦手としているようだけれども。
「・・・・・あー・・・・・」
届けられたときは、ラズロはおろか、テッドですら驚いた。
ジーンも注目したそれは、明らかに一般流通している代物ではない。間違いなく発注品で、しかも装飾や技術を見ても、一流の細工師たちが手掛けた一級品だった。
そのときはまだ一度も座敷についたことがなく、ほとんど面識がないと言ってもいい状態だったテッドは、座敷に上がったとき丁重にお返ししたのだが。
だが貴様、この間壊していただろう、と。
ごく簡単にそれ以外の理由などないといった様子の送り主は、挙句の果てに、貴様が使わんのならゴミにするしかないなと、あんたそれにどれだけの労力と資金と価値があんのか解ってんのかと罵倒しそうなことを口にするから、ああもうどうにでもなれと自棄気味に受け取った。
あのときほど、自警団の到着遅れで、手を出した自分を呪ったことはない。
持っていた三弦は言葉通り、壊した、のだ。壊れた、ではなく。
しかもそれは厳密には自分のものではなかった。
使って、と言われて渡されはしたが、元は見世お抱えの髪結いの、顔も思い出せない母親の形見だ。だから女性が持つような彫と彩色だった。
首と胴がバラバラになり、弦が千切れた状態を見せ頭を下げると、瞳を大きくして驚いた表情を見せたものの、すぐに慌てたように近寄り、テッド君は平気なの? 怪我は? と聞いてきた。
ないと伝えれば、それなら良かったと、ほっと笑う。
あんまりにも良い奴すぎて、そうじゃねぇだろと叫んでみても、でもそれを庇って怪我をする方が僕はいやだよと言うから、良い奴でお人好しで優しすぎる途方もないバカだと認識を改めた。
そんな女性向けの三弦を持っていた経緯があったのだが、送り主はそこをどう捉えたのか、きっちり女性が持てば映える造形のものを寄越してきた。
そして現在、いろんないわくつきの三弦は、こうしてテッドの腕の中におさまっているのである。
「・・・やっぱ受け取るべきじゃなかったんだよなー・・・」
正確には、三弦を武器にしなければよかったのだ。手頃な物が見つけられなくて、持っていたそれで殴りつけたのがいけなかった。
そりゃ壊れる。
はぁと一瞬で思い出される様々な出来事に溜息を漏らし、再び濃紺の風呂敷を見やる。さすがにもう、随分と手に馴染んだものだ。
「でも良かったじゃない。なくちゃ商売にならないでしょ、大夫衆が」
「そんときは裏方に引っ込む。別に大夫衆じゃなきゃやってけないわけじゃねぇ」
「それは認められないなぁ。テッド、うちの財源の一角だし」
夜中の賄いや時間ずれの食事などは、テッドが自ら作ることが多い。一人分くらい、わざわざ料理番に頼むものじゃないという手際は鮮やかで、裏方の仕事もきっとこなせると思っているが、テッドの大夫衆としての芸や業、知名度は、裏方に回してしまうには惜しい。
鼓と笛で繋いだ数日間も、昼見世はともかく、夜見世の座敷はずっと出っ放しだったのだ。三弦の一つくらい、見世側でどうにかした方が、見世的な思惑としてもいいと判断できる。
ラズロとしても、自分が用意するつもりで細工師たちに話をしてはいた。発注をかける前の図面案の段階で、例の三弦が届けられたから取り止めにしたけれど。
財源と言う言い方も何だが、間違ってはいないのだ。
「とりあえず明日、ジーンさんの昼座敷よろしくね」
「・・・了解」
眠りに入った廓を二人で歩く。
ご指名を頂いた昼見世までの時間は半日近い。夜見世は馴染みの座敷が入っているから、昼からは休憩が取れる時間があったとしても僅かだろう。見世に戻ったら即寝に限る。
起きる頃には姐さん方の支度用意も始まっているだろうから、その手伝いと自身の支度をしている間に頃合いだ。
それから座敷の準備と手配、宴に上がり座をこなし、客を見送って見世に戻る。
翌日はまた、姐さん方の支度手伝いから一日が始まり、座敷へ。
こうして毎日が過ぎて行く。
「・・・・・聞いてねぇ。」
「私が御招待したのよ。折角ですもの、良い機会だと思って。先日の紋日は生憎の雨で楽しめなかったし。ねぇ?」
「ジーンさんほどの松にお誘いいただけるのは、楼主代理としても光栄ですから」
「僕はどっちでも良かったんだけどね。うちの禿が行きたいって言うから」
「楽しみにしておりました。よろしくお願いします、テッドさま」
「女性からの招待を断るなんて、帝国紳士としてあるまじき行為だからね」
廓一の松の位と、一癖どころか二癖も三癖もある松の位とその引込新造、自身が所属する楼城の主代理と、一番の馴染み。
用意された座敷に揃ったのは、そんなメンバーだった。
「・・・・聞いてねぇ・・・ッ!」
過ぎて行く、同じようで同じではない日々。
年に二、三回程度の頻度で、荒野から大所帯で義賊が来るよ!
っていう小ネタ以外は盛り込んだ!
あー、楽しかった!(笑)
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