300歳ブログ
300歳のためのブログだよ!
30のお題・)29通過地点
2012.01.30 (Mon) | Category : 30のお題
どうも。月島・マイナー・うらのです。
自覚はあります大丈夫です。
年明けてからやる気が激減して(いつもそんなないけど)、どうしようかなって思ってますが、書いてりゃ上がってくんだろと、いつもの通り見切り発車です。
いかんと思いつつ、でもきっと書きながら固まってくから成行きに任せよう、うん。
そんな折り返し一発目のお題は過去捏造第弐弾です。
第壱弾は炎の英雄の辺りの捏造三昧シリーズですが、今回の時代はもっと前で、これと、あと一つか二つのお題で終了の予定。
ちょっと多分、公式を無視してる気がするので要注意。
うちのテッドは霧の船で年を取っていません。
時間の流れが関係ない空間ってことは、成長もしないんじゃねぇのっていう解釈。
も少しいろいろ思うところがあるけど、深く考えてはいないです。(え)
何言ってんだよ公式ガン無視、日本語でおkはいつものことだろっていう崇めたもう神のごとき貴方は、顔文字君からどうぞー!
チリ、と右手に僅かな違和感が走る。
甲の文様が嘘のように綺麗に剥がれて数年経つが、未だそこに存在しているような感覚と、時折示される鈍い反応は、忘れるなと言わんばかりに自己を強く主張する。
いわゆる普通の人としての生活、に感動し、いっそこのままと楽しめたのは最初の数ヶ月だけで、考えないようにしていた罪悪感や責任感、焦燥感に耐え切れず町を出た。
とはいえ、足取りを追うための痕跡を探すにはもう遅く。放す気はないのだと嫌でも知らしめられた、右手に残る形のないとぐろを巻いたような闇の気配だけが手掛かりだ。
ただ、予想はついている。
使用は器である選ばれた躰が必要だが、闇だけを、しかも宿主自身を厭わぬ強引さで分離させた。手段はもとより、その技術そのものが尋常なものではないとくれば。
ハルモニア神聖国。真の紋章の研究や収集も行われているという。
(・・・問題は、どこで研究されてるかだ)
研究施設は各地、ハルモニアの全土に、それぞれが最高設備の厳重体制で置かれている。
いくつもの都市や町を通り、ここだけは嫌だなと思っていたけれど、考えてみれば、いや、考えなくてもここ以外の選択肢はなかっただろう。遠目でも圧巻されるほどの、その堂々たる佇まいを視界に入れて、テッドは小さく溜息をつく。
(でけぇ。)
ハルモニア神聖国、首都クリスタルバレー。中心にある宮殿から同心円状に町が広がり、近い方から一等市民、大通りを挟んだ外側に二等市民、そのまた外側に、壁もしくは堀を挟んで三等市民と、階級によって住み分けがされている。
階級制度が極めて厳しいこの国は、一般旅行者ですらもやすやすとは入国が出来ない。第三層はまだしも、二層以上への立ち入りは、身分や身元がはっきりしている者であることが最低条件だ。
「テッド、こっちだ」
死神が右手を離れて、止まっていた時間が正常に動き出した。まだ少年の域を出るには遠いけれど、村を後にした頃の姿を考えれば、やっていくにはどうにかなるまでには成長したのだろう、こうして非合法な取引も、前に比べればやりやすくなったのだから。
「ここからは全くの無関係だ。どっかで会っても反応しないぜ」
「ああ、解ってる。助かった」
「そりゃこっちも同じだ。じゃあな」
利害の一致でここまでの行動を共にした男のツテで、適当な身分を偽り第二層への出入りが許された。テッドの表向きは、語学ために諸国を旅して勉強中の下級貴族のファレナの学生だ。家紋入りの書状と、ちゃんと存在している王国直下の学院証を提示し、いくつかの問答を経て許可が下りる。
もちろんどちらもでっち上げたもので、バレれば相当マズイことになるが、確認するにも時間がかかるだろうし、書類は精巧に作られているから、発覚前に済ませられるだろう。
というか、そうじゃなくてはいけない。
「すみません、部屋を少し長めに借りたいんですが」
第一層と第三層の丁度中間くらいにある宿屋に決めて、家名がある身分だと、いつも以上に背筋を伸ばして扉を叩いた。
当然だが、住んでいる人間は他とあまり変わらず、警備や管理を信用している面も大きいのだろうが、意外なほどあっさりとテッドは宿の人間に受け入れられた。それなりにちゃんとした服装と態度をしていれば、それなりに見られるらしい。
「今日も図書館? 勉強熱心ねぇ」
カウンターで宿屋の女将に外出の旨を伝え鍵を渡せば、人の良さそうな笑顔で返され、いってらっしゃいと追って声がかけられた。振り返ってテッドも笑い、頭を下げて外へ出る。
今日で四日目。初日と二日目は昼間の時間全部を使って、一層と二層の隅々まで歩いて街の構造を確かめた。三日目はクリスタルバレーの内部でも解ればと図書館に出向き、蔵書の多さに楽しくなっていろいろ見ていたら、いつの間にか一日を使ってしまっていた。
(マジで学生するつもりかっての)
自身でツッコミを入れて溜息をつく。とはいえ何事もなければ、研究者たちに混じって読み耽りたいところだ。ハルモニアの国立図書館の名は伊達ではない。
既にどの辺りに何があるかを把握し、慣れたように足音を吸収する絨毯を踏みしめ、テッドは図書館の奥へと入り込んでいく。
国を挙げての取り組みのおかげか、紋章に関する著書が極めて多い。その一角にまるで、研究書のように事細かな記述がある書物がある。
少なくはない冊数に及ぶそれは、著者も発行者も不明の、けれど確かに関わっているものの手による書だと解るほどに内容が濃い。他の研究者による書物も同じく並べられているが、それだけが群を抜いていた。
(・・・・・まぁでも、理解できるやつがいるかどうかっつーと別だな)
紋章とは万物を司る奇跡が具現化したもので、宿せば人知を超えた力を得られる、零れ落ちた世界の欠片、のような、欠陥など何一つとしてない、比類なき完全のものだと思われている節がある。
(でも実際は、圧倒されるほどに暴力的な力だ)
眷属紋章や特殊紋章などはそうかもしれない。
だが、事、真の紋章は違う。
この身に宿して三桁程度になるが、もたらされた力は奇跡、などと言えるような神聖なものではない。
もちろんそれは真の紋章の本質を知っているからの話であって、一般的な紋章しか知らなければ解るはずもない話だが、名を示さぬ不明の著者は、その真実を知っているようだった。
「お気に召したようだね」
本来ならば、そんな研究著書は後回しで調べ物をと思うのに、何故かやけに気になって、もう全部読んでしまおうと諦めた時。笑み交じりの声が、周りを考慮したように潜められた音量でテッドに届く。
「随分熱心に読んでいるじゃないか」
「あ・・・すみません、昨日は。ご迷惑おかけしました」
棚の入り口に肩を預けた格好で佇むのは、他とは少し違ったローブをまとう司書。時間も忘れて読み耽っていた前日、悪いけど閉館だよ、と声をかけてきたのがこの男だった。
「いや、構わないさ。こんなところじゃなくて読書スペースで読めばいいのにとは思っているけど」
なんか癖で、すみませんと苦笑して再度頭を下げる。
事実テッドには、わざわざ本を持って読書スペースへ移動するという習慣がない。よほどのものでなければ大概立ち読みで終わらせてしまう。
「そんなに面白いかい?」
司書の男は笑みを浮かべたまま、改めてそれ、と指をさして尋ねてきた。
「この辺りは専門図書の中でも更に専門的というか、深いものが多くてね。君みたいな子が読んでいるのは珍しいし、その本は、ちょっと特殊だろう?」
言われてああ、と納得する。
人数のチェックも行っているらしく、閉館時に入館者数と退館者数が合わないとテッドを探され、見つけられたときの第一声が、まさかここだとは思わなかったね、だったのだ。
そりゃそうだろう。専門過ぎてほとんど人が来ないような場所だ。
おかげでこうして立ち読みライフを堪能しているわけだけれども。
「そうですね。他の研究書とは違った視点で・・・初めて見ます」
これでも結構いろんなものを読んでいるが、こういった内容のものは見たことがない。類似作品や写本についても同じだ。これしか見たことがない。
「へぇ。じゃあ、この辺なんかも読んでるのかい?」
驚きと興味が混じったような表情の笑みで、男が隣の棚に並んでいる、別の著者の研究書を数冊引き抜いた。
「今の紋章理論における、解釈の元になった本ですね。原書はありませんが、いくつかの章の抜粋本なら」
「これは?」
「別の著者が一つにまとめたものでしたら、全部通しで」
ひょいひょい無造作に出してくる様々な本に対し、淡々と答えるテッドが面白いのか、男の瞳が楽しそうな色へと変わる。
さすがのハルモニアは原書で揃えてあって、それは見るのも初めてだが、詳細というならば、後世の人間が残した著述で識っていた。提示されたほとんどに頷いて、内心で何でもあんな、と感心する。
「なるほど。特殊なのは君の方だったのか」
抜き出した最後の一冊を元に戻しながら呟くように言い、ゆっくりと振り向いた男の笑みは深い。しまったと思った時には遅かった。
「恐らく現存している原書はもうここにしかないだろう。君が言った書物も、一部のものはすでに特別重要資料となっていて、そう簡単に読めるものではないんだがね」
君は何者だい?
ここは図書館の最深部だ。しかも間の悪いことに、テッドがいたのは通路の一番奥。本棚に片手を伸ばせば、狭い通路は塞がれてしまって袋小路になる。
「・・・不肖の末席ながら、院に名を連ねておりますので奥に顔がききます。遊学の途中に読んだのかもしれませんが、どこでかは定かではありません」
特別資料となるほどのものだ。一般の図書館に置いてあるものなどもうないのだろう。子供のなりの自分が、そんなものを一体どこでと疑問に思うのも無理はない。実際、読んだのはかなり古い記憶のものもある。
真実を嘘に混ぜ合わせてもっともらしく繕ったが、喰えない男は誤魔化されてくれたのかくれないのか、笑みを浮かべたまま小さく首を傾げた。
「出身は?」
「ファレナです」
当然ながらテッドの身分証は偽装である。触れ回せるものではないから、聞かれたこと以上には答えない。
ふむ、と通路の真ん中を陣取っている男が、考えるように視線を彷徨わせ、少しだけ改まった表情でテッドを見据える。
「君は紋章を何と考える?」
予想外の質問で、これには思わず面食らった。
「・・・何、とは」
「そうだね、君が考える紋章はどんなものか、どう思っているのか、印象とか感覚とか気分とか、そういったもの、と捉えてくれればいいよ」
質問の意図が解らない。けれど出来る限り穏便に済ませたい。振り切って逃げるのは簡単だが、何の情報も得られないまま騒ぎを起こし、行き当たりばったりで内部で探し物をするには分が悪すぎる。
短く息を吐き出して、ゆっくりと口を開いた。
「特に何も。気が付いた時にはもうそこにあったので、そういうものだという認識しか。万能でもあり無能でもあり、人とは別の次元の何か、ですかね。ただ、厄介で面倒くさいものだなとは思います」
「真の紋章については? 実在すると思うかい?」
「するんでしょう? ここは、ハルモニアなんですから」
答えた瞬間、弾かれたように男が笑い声を上げる。図書館という、静寂が支配する空間でと焦るが、最奥の人気の少ない場所のおかげか、僅かにざわついただけで咎もなく収束し、テッドは胸をなでおろした。
「面白いね、君。私の周りにはいなかったタイプだよ」
探るようだった笑顔が満面のものへと変わり、本棚についていた片手をゆっくりと引き戻すと、手のひらを上へ向けテッドへ差し出す。
「来るといい。君に『ハルモニア』を見せてあげよう」
それは。
間違いなく。
たった今、テッドが口にしたハルモニアの意味。
ハルモニア神聖国イコール真の紋章。それを見せてやろうと、そういうこと。
この男はハルモニアの紋章研究施設の、しかも口振りからして恐らく上位の人間だ。ローブが違うのは、そもそも司書ではなかったかららしい。
虎穴に入らずんば虎子を得ず。出てくるのは鬼か蛇か。どちらにしても、小さいものではないだろう。
けれど、これ以上はない絶好の機会。
「・・・・・行きます」
気付かれないよう深呼吸をし、テッドは意を決して男を見上げた。
ハルモニアの神殿ってなんか名前あったっけ、クリスタルバレーだからクリスタルパレスとか?
いやいやどんなセーラームーンだよって一人ツッコミして調べなおしてみたら、円の宮殿だったっていう。
酷いにもほどがあるわ。(苦笑)
なお、街の構造は想像上の産物です。
続きまーす。
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