300歳ブログ
スプリンター
2010.10.22 (Fri) | Category : 小話
私の場合、この台詞をこのキャラに言わせたい、からネタを広げます。
漫画も似たような感じで、漫画はむしろ台詞だけで流れを作り、あたりも取らずにいきなり原稿に描き始めます。
ネームと言うのを知ったのは、つい最近です。(苦笑)
だから遅いんだよね! なるほど!
でもあれ、作れないんだよね、私。ネームの通りにかけないし。(何で)
と言う訳で三都の新刊が不安です。
相変わらず無駄に詰め込みまくっているので、ページ数がコピー本じゃねぇだろってことになってます。
まぁこれも毎度のことなんですがね!
ギリギリまで頑張んよ!
しかし最近、やたらと長くなっている気がする。
読みにくいですね、すみません。
気をつけます。
「最近姿を見なんだ故、どうしたのかと思っておったのじゃが」
よもや海に居ようとはの。
「・・・俺もまさか、あんたにここで会うとは思ってなかったよ」
ザザ、と波の音が静かな月夜に響き渡り、適度な雲が星空を隠す。碇が降ろされ停泊した巨大船は、ユラユラとたゆたい揺れた。
普段昼間でも特定の目的を持った人間以外、あまり人気のない後部甲板。夜、それも深夜ともなれば、足を運ぶものなど皆無に等しい。
のだけれど。
「そうじゃな、お互い様じゃな」
今夜はクスクス小さな笑い声を零し、身軽に欄干に腰をかける少女と、その欄干に肘をかけて体重を預ける少年がいた。
差し込む月明かりで、少年の方はテッドだと判別できるが、少女の方は巨大船の乗組員ではなく見覚えがない。一体いつ乗り込んだのか。
辺りには島影もなく、この船が島に立ち寄ったのは五日前だ。
「何かあったのか」
「いや。探し物を追っている途中、知らぬ気配を感じたので寄っただけじゃ」
海側に投げ出したすらりとした足をブラブラさせながら、少女は楽しそうに口角を上げて言う。テッドもその答えに、ああ、と納得したように頷いた。
「ハルモニアは」
「これだけ大きな力が動いておるのじゃ。遅かれ早かれ、奴らも動くであろうの」
ならばまだ、表立っての動きは少女も感知していないということだ。
群島全土を巻き込んだ戦争は、既に終盤を迎えている。真の紋章をハルモニアが確認しているとしても、現段階で動きがない以上、大軍隊を組んで奪いに来る頃には自身は離脱しているだろう。
それに知覚されているのは恐らく、罰だけだ。
現に少女は『知らぬ気配』と言った。テッドのことを感じたのならば、そうは言わない。
「今は様子見か」
「そう考えても良いじゃろう」
一つの会話が途切れたところで、無意識に大きく息を吐き出したテッドを見やり、少女は笑う。
「相変わらずのようじゃのう、おんし」
「何が?」
「捨て切れんと見える」
紅い瞳を細めた目元は柔らかい。月の光を弾く白銀の髪も、抜けるように白い肌も、静かな闇夜の星空と相成って幻想的で、神々しささえ湛えている。
けれど今綴られた内容は、そんな優しい話ではないと、過去のやり取りで知っていた。
「・・・捨てるつもりなんかないって言った」
希望や未来、そして何より、人であることを。
右手の死神が喜んで狩るのは、そういった強い光だと解っていても。
「難儀な子よ」
少女は向いていた視線を海へと戻し、フッと小さく息を漏らす。それからひょいと足を持ち上げ、腕を軸に身体を半回転させた。
「まぁ、そこが可愛いくて気に入っておるのじゃが」
ニコリと見せた笑みに、テッドは呆れたように溜息をつく。
「俺はあんたの趣味じゃなかったと思ったんだけど」
「そうじゃな、ちと違うのう」
軽い音を立てて甲板に立った少女は、何の躊躇いもなくテッドの首に細い腕を絡ませている。至近距離に互いの顔があるのだが、淡々と交わされる会話と変わらない表情は言葉の通り、その体勢とは矛盾した。
「それにあんたが気に入ってるのは、そこじゃないだろ」
手すりにかけていた肘を億劫そうに持ち上げる。包帯を巻いただけの指は、少女の腕の内側にあるものを撫でた。
テッド自身の、首を。
「さすがによう解っておるの」
先ほどとは違う色を含ませた紅い瞳が細まり笑う。
「どんだけの付き合いだと思ってんだ。・・・あんまり多くは無理だからな」
「おんしが甘いのが悪いと知やれ」
「んな理不尽・・・ッ・・・ン・・・」
言い終わりを待たずに少女は腕の幅を狭め、晒されたテッドの首に顔を埋めた。ぷつりと何かが刺さったような音が響き、言葉が途切れる。
痛みは感じない。逆に与えられるのは快楽。厄介なそれに、眉を寄せて耐えた。
「・・・ちょ・・・も、やめ・・・っ・・・」
ややあってクラリと視界が回り、指先に僅かな痺れが走る。これ以上は無理だと声を上げ、テッドは少女に制止の意を唱えた。ゆっくりと顔を上げ首元から離れた少女は、けれど腕はそのままに、視線を合わせてうっそり笑う。
「馳走じゃった」
「・・・・・・・・・あんたな・・・」
揺れる頭に眩暈を認めて、欄干に片手をつき体重を支え、もう片方の手は固定させるように頭に置いた。足にまで来なかったのは上出来だ。以前、動けなくなるまでに陥らされたのを思えば。
「さて、そろそろ行こうかの」
絡ませていた腕をゆるりと外し、ニ三歩距離をとった少女が言う。一度視線を奥の暗がりへ投げてから、天上の月を見上げた。
「良い月夜じゃな。これならば迷わず行けるじゃろ」
少女は続け、身軽に欄干の上に乗り、腕を広げた。風を受けて、外套がばさりと大きくたなびく。
「気をつけろよ。陸までは遠い」
「案ずるな、わらわを誰と思うておる」
高くなった顔の位置に合わせ、テッドも見上げて言うが、少女は口角を上げて得意げな笑みを見せた。背後から降り注ぐのは白銀の光。屈みこんで額を寄せる。
「テッド、おんしに月の加護を」
「・・・闇を統べる我が王の祝福を、シエラ、あんたに」
そう交わすと、見合わせて微笑んだ。ではの、ああ、と簡単な別れの挨拶を口にして、少女の方はそのまま欄干の向こうへと踏み出す。
先は海だが待ってみても水に落ちる音も何もせず、ただ、キィ、と甲高い音を立てて鳴いた一匹の蝙蝠が、頭上を一度旋回してから飛び去った。
しばらくそのまま見ていたテッドが、くるりと身を翻して欄干にもたれる。そして小さく息を吐き出してから。
「俺は部屋に戻るけど、お前はどうするんだ」
十数えても何もなかったら行ってしまおうと思っていたのだが、予想外にも三つ数えた早い段階で動きがあった。
「え、と。バレてた?」
「最初からな」
月明かりの入らない奥から声が届き、同時に居心地悪そうな様子のラズロが顔を出す。テッドの返事に苦笑して、足元に積んであった樽を乗り越え近付いた。
「ごめんね、覗き見するつもりでいたわけじゃないんだけど」
などと言いながらも、まぁ結果的にしっかり覗き見した身分で言い訳できないね、と開き直ったように頷く。そこに関しては、テッドも解った上でしていた会話なので、別に咎めようとは思わない。
ラズロもテッドの態度に、それは解ってはいるのだろうけれど。
「・・・あのね」
とても言い辛そうに言葉を発する。
何となく言いたいことが解る気がした。
「あの子は誰で何者なのかとか一体どこから来てどうやっていなくなったのとかアレ何してたのとかハルモニアの話とか最後のどういう意味とか聞きたいことは山程あるんだけど、とりあえず」
どういう関係ですか。
「・・・・・・・」
息継ぎなしで一気に捲くし立てられた。
テッドとしては、どういう関係も何もない。ただの知り合いだ。ただの、と言うには付き合いも長く、お互いがお互いのことをいろいろと良く知ってはいるけれども。
説明しあぐねて間を置いていたら、不思議そうにきゅっと眉を寄せたラズロが口を開く。
「恋人、ではないの?」
「それはねぇ。」
ぶん、と首と手振りをオプションに、即座に否定した。気のせいか顔色も悪く、半目ですらある。
「でも。だってさっきの」
「絶対ねぇ。それだけはねぇ。」
何が起こってもありえねぇ、むしろ何でその結論に至った。
物凄い否定具合に、逆にラズロが驚く。
「えっと・・・仲良さそうだったんだけど・・・なんでそんな?」
否定はされるだろうと思っていたし、されたとしてももう少し違った反応だと思っていたのだが、これでは否定と言うか拒絶と言うか。気のせいでなければ、脅えも含んでいるように見える。
ますます関係が解らなくて、疑問符を飛ばし放題飛ばした。
「アレはそんな生易しい相手じゃねーんだよ。お前もそれ持ち続けるんだったら気をつけろ」
長い溜息を吐き出し忠告すれば、ぱちりと一度瞬きをしたラズロが、理解したように息を呑む。
「じゃあ」
「月の継承者で、始祖だ」
ぐいと襟元を下げ、首を傾ければそこに、紅く二つの斑点。
それは御伽話に聞く傷跡に良く酷似していて、月と始祖と言うキーワードから、一つのものへと繋がる。
「・・・吸血鬼」
無言で襟首を正したそれは肯定。
ただそれだけで、さっきのラズロの質問攻めのほとんどの回答が成された。
「・・・初めて見た・・・って言うか、本当にいるんだね」
「まぁ、普通に生きてる限り、出遭うことはないな」
現在吸血鬼一族の蒼き月の民は、族長である少女、シエラを除いてたった一人しか存在しない。この広い世界で、その二人に遭遇する確率など、ほぼないといっても過言ではないくらい低いだろう。
テッドは係わり合いがあっただけだ。
「何」
遠い昔の始まりを思い出しかけたとき、じっと見てくる青い双眸に気付いた。
「・・・テッド、咬まれたんだよね」
「咬まれたって言うか・・・まぁ」
正確には血を吸われた、だ。血どころか魔力まで吸い取っていくから始末に負えないのだけれど、その辺をわざわざ言うのは面倒だったので省く。
「吸血鬼になったりはしないの?」
「しねぇよ。」
どことなく目が輝いているのは気のせいか。
それにしてもどこの地域に行っても、間違った知識で語られているのだなと思う。咬まれた相手も吸血鬼になるというのは迷信で、実際そんなことは全くない。
じゃなかったらテッドは、百五十年近く前に、既に吸血鬼になっている。
もういいだろ戻ろうぜ、と足を踏み出し船内に入れば、まだ物足りない表情のラズロも渋々続いた。階段で分かれるとき、「あ、ねぇ」と声がかかる。
「あれ、僕にもやってもらえないかな」
「あれ?」
「何て言ってたかな・・・祝福?」
誓いのような祈りのような。
呼気すら届くほどの近さで、しめやかに交わされた言ノ葉。
「・・・ああ、あれ」
思いついたテッドに、そう、と言ってニコニコ笑うけれど。
「嫌だ」
「ええー」
「煩い、何時だと思ってんだ。さっさと寝ろ」
にべなく却下をくらい、しかもそのまま行ってしまった。離れていく背中に、ラズロはあえて挨拶を投げる。比較的大きな声で。
「気をつけて部屋に戻ってね! おやすみテッド!」
「っ・・・!」
深夜の静まり返った船内、その上階段。確実に全階に響く。ラズロの声で、テッドの名前が。
信じられないと言った様子のテッドをニコリと見て手を振った。眉を寄せて一睨みしたあと、足早に去っていく後姿を見えなくなるまで見送って、ラズロはゆっくりと踵を返し自室へ戻る。
最初は魔女かと思ったのだ。
紅い瞳も白い肌も溶けるような墨色の外套も。
まるで、話に聞くだけの世界の、それのようで。
(・・・迎えに来たのかと思ったんだよね)
闇夜にも浮かび上がる、月の光を弾いて淡い黄金色の髪のテッドを。
彼は、彼の右手は、そのものだと思ったから。
フタを開けてみれば少女は魔女ではなく吸血鬼で、当たらずとも遠からずだったことに驚いたけれど。しかも旧知。
「世界は大きいなあ」
無意識に左手に力を込めて、思わず笑った。
折角だから、明日は何かしてみようかな、と思いながら。
これがハロウィン用だなんて、きっと言っても理解してもらえない!
