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30のお題・)25船

2010.09.24 (Fri) Category : 30のお題




更新遅くなってきました。

まぁ最初は練ってあったネタ引き延ばすだけだったんで、そんな時間かからず作れたんですよね。
そろそろまだ発酵中のとか、混ぜ合わせただけの段階のとか、後は、ちょっとまだ出せない幕間ネタとか、そんなんしかなくなってきまして。
会話文だけだったらいっぱいあるんですが、文字しか見るとこないんで、ある程度形にしてからのほうが良いよなとか思うと、やっぱかかりますね。
まー仕方ない。
すいません。


と言うわけで。
船って言うか・・・船・・・?






拍手[6回]







 最初からおかしいとは思っていた。
 それでも今までの旅で皆無ではなかったし、紛れ込んだと言う可能性もあったから、こんなものなのかと思ったのだけれど。
 ある日、物資補給と僅かな休息を兼ねて立ち寄った港町で、原因と言うか元凶と言うか、とにかく、発生の大元に遭遇した。
「・・・お前か」
「え、何が?」
 盛大な溜息を吐いてテッドが見た先は、両腕に饅頭と猫二匹、背中から肩にかけてもう一匹を張り付けさせた軍主、ラズロの姿だった。

 群島諸国はその名の通り、海に浮かぶ諸島々の地域を指す。
 亜熱帯の気候は海風を孕み、常に湿気や磯の香りを纏わせた。それは土地に住まうものにも及び、ならば船で生活するものは、晒されていると言っても過言ではない。
 そんな場所では、毛素材の衣類や敷布等の需要はほとんどなく、供給の必要もないせいか、店頭は元より、素材を集めることさえ交易以外では難しい。
「良いよね、猫」
「そこじゃない」
 もちろん山に入れば獣の類は魔物に限らず生息しているから、毛を持つものだっている。街でペットとして犬や猫を飼う場合も。
 けれどここは。
「どうして船に連れて来るんだって言ってるんだ」
 規格外の大きさとは言え、間違いなく船だ。しかも戦争をしている中心で、いつ、どうなるかも知れない。
「連れて来るって言うか・・・仲良くなるんだよ」
「どっちにしろ連れて来てるのは変わりないだろ」
 一匹や二匹なら何かの手違いかもしれないが、柄が違うことに気付いて数えてみたら五匹いた。これは確実に手違いや紛れ込んでいるのとは違うと思った矢先に、件の衝撃映像だ。溜息やら何やら、吐きたくなるだろう。
「・・・お前が軍主だ。お前が連れて来るのは構わないと思うけど」
 だからって際限なく増やすな。
 じとっとその腕の中の二匹を見たテッドが言うと、肩に乗る猫に頬を寄せるように首を傾げて苦笑する。
「解ってはいるんだけど、野良の子達見るとついね」
 猫好きだしと続ける間にも、腕の中の二匹を撫でる手は止まらない。その上もう一度、「良いよね、猫」とのたまった。
 別にそこは否定しない。
 どういうしつけをしたのか、落し物もしないし行儀もそれなりで、戦闘時には姿を見せることさえないという優秀さだ。廊下の隅で丸まっていることはあっても、邪魔になることはない。むしろその光景で和みを感じることもある。
「あのな」
 とは言え、そんなにどうするつもりだ、と言おうとしたところで。
 にゃー。
 足元に黒一色の猫が懐いてきた。
「あ!」
 新たな愛玩対象が現れたことに、ラズロがパッと花を咲かせて笑顔を向ける。器用なことに、両腕と肩の猫はそのまま、屈伸をする要領でしゃがみこんで手を伸ばした。けれど。
 ににっ。
 身を低くすると小さく鳴いて、テッドの足元から離れようとはせず。
「えー、おいでよー」
 威嚇のような格好にかなり残念そうな声で、チッチッと指を動かしても変わらない相手に眉尻を下げた。
「他の子抱っこしてるから嫌なのかな」
 うーんと唸り、諦めたのか、また腕の中の二匹を撫で始める。名残惜しそうに、黒猫をじっと見つめたままだ。
「僕ね、猫布団が夢なんだ」
「・・・は?」
 この軍主は唐突に意味の解らないことを口走ることがあるが、この台詞はその中でも最たるものじゃなかろうか。直前の話からの流れなのだろうとは思うのだけれど、間に必要な二、三個の話をすっ飛ばした先をいきなり言葉にするから、おかしなことになる。
 って言うか猫布団って何だ。
「まぁ字の如くなんだけど、布団って言っても敷くわけにはいかないから、掛け布団だね」
 疑問符を浮かべるテッドに気付いたラズロが、猫布団の説明を始めた。中身は予想通りではあったけれども。
「猫、暖かいし毛皮じゃない? 絶対気持ち良いと思うんだ」
 だから猫をいっぱい連れてくるということだろうか。
 気配や動きに敏感な猫は、よほどじゃないと一緒には寝ない。警戒心の強い野良はなおさらで、ある程度は仲良くなれても一緒に昼寝レベルまでは、なかなか到達しない、らしい。
「チープーは一緒に寝てくれるし、本当布団ってサイズなんだけど、やっぱり目指すのは猫まみれかな」
 ニコニコと語るラズロは、キラキラした目で良い笑顔を見せていて、海の色に似たそれは、今限りなく近い光を放っている気がする。まだ先になりそうだなぁなんて言う視線は、見上げていたテッドから離れ、未だに警戒を解いていない黒猫に向けられていた。
 諦め悪くまたも手を伸ばすが、今度は先程よりも鋭く鳴かれた。
「あーあ・・・」
 さすがにそれにはガッカリきたようで、ぎゅっと腕の猫を抱き締めて肩を落とすと、そこにいた一匹の茶猫がバランスを崩して飛び降りる。トトトっと軽い足音を立てて寄ったのは、手酷く振られた黒猫の元。
 あ、と思っていたら、何の気負いもなく焦茶色の手袋をした腕が伸びてきた。
「あ、れ?」
 ぽかりと口をあけた、軍主らしからぬ間の抜けた顔のラズロは、ひょいとそのまま大人しく抱き上げられる黒猫を見やる。なうーと甘えたような声まで発し、肩口に前足を乗せ上げ頬にすり寄った。
 抱き上げたテッドの。
「え、どう・・・?」
 挙句、ラズロの肩から飛び降りた茶猫も、黒猫へ駆け寄ったままテッドの足元に落ち着いている。
「・・・昔から懐かれやすいんだよ」
 言いながら片手を伸ばせば、身軽に腕を伝って肩まで登り、見事な動作でそこに留まった。黒猫もテッドにすり寄った格好のままでいる。
 明らかに仲良し度合いが高い。
 同じかそれよりも後に出会ったはずなのに。
「とりあえず、もう連れてきたのは仕方ないとしても、収拾つかなくなる前にやめとけよ。軍師がエサ代はお前から別途請求しようかって言ってたからな」
 実際は各自が饅頭屋や料理店から購入してきたものを分け与えていたり、残り物を置いていたりする状態なのだが、本気でラズロが無限収集でもして増えに増えまくったら、それでは足りなくなるだろう。船内で子を生む可能性だってあるのだから、今の状態でも十分いる数なのだ。
 いろんな部分に驚いて、何の反応もできなくなっているラズロを見て、テッドは何度目かの溜息を吐いた。
「お前がいない間、誰が世話してると思ってんだ」
 これ以上はさすがに無理、そう言ってからくるりと反転して行ってしまう。動いたことで肩から降りた茶猫はその後を追い、黒猫は相変わらずゴロゴロと懐いたまま。
「え・・・?」
 見えなくなった背中に呆然と呟く。
 確かに自分は忙しい身で、やれ一日会議だ、やれ何日も作戦中だ、やれ資金稼ぎに遠出だ、と船にいないときは多いけれども。
 メインのパーティーメンバーに組み込まれているテッドだって、それなりに忙しい。
 けれどさっきの台詞は、その合間にでも気にして見ているということに他ならなくて。
(・・・何それ)
 テッド、実はものすごく猫好きなんじゃない・・・!
 トラヴィスのように公言して、態度にも出てるわけではないから気付かなかったが、そう言えばと思い返してみれば、後部甲板等に姿を見せているときには、付近に猫が侍っていたような覚えがある。たまたまなのかと思っていたが。
「うん・・・うん、よし」
 船に猫、正解、と小さく頷き、ガッツポーズまでしたラズロは、大人しく腕の中にいてくれた猫に話しかけた。
「ようこそ、僕の船へ! いろんな人がいるけど、みんなとてもいい人だよ!」
 戦争の真っ只中ではあるけれど。
 それでもある意味で、ここが一番安全だと言える。
「僕の自慢なんだ」
 自身のあるがまま、何に怯えることなく生きていけること。
 この船が最初。
 これから広げていく。
「まぁ、目下の目標は、君たちと仲良くなることなんだけどね」
 そして猫布団! と息巻く様子に、解っているのか解っていないのか、一匹の猫がにゃーんと鳴いた。
 
 諍いとは無縁のような、実に平和な船での日常。





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月島うらの
性別:
女性
自己紹介:
ただひたすらに、テッドへの愛を叫ぶ。
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